『Million depth』は2025年11月12日にsteamにて発売された2Dアクションゲーム。
本作は左右の移動とジャンプとダッシュを基軸としたシンプルなアクションで主人公を操作する。一階ごとに出現する地下生物を全て倒して次の階へと進み、地下100万層を目指す。
一層ごとに手に入る武器制作の要となるパーツを集め、武器を強化しながら踏破を目指すローグライクな手触りが癖になるゲームだ。
宇宙で仲間を失い、無機質な宇宙船にただひとり残された少女“モマ”。
彼女は、地球にいる大切な友達“キミ”に会うために、地球に穿たれた巨大な奈落、「ミリオンデプス」へと向かう。
挑戦する度に地質が変化する大空洞ミリオンデプス、集団で襲ってくる地下生物。
それらに対抗するモマの切り札が、時間停止技術「ビオトープジャマー」である。
モマの操作を止めれば、敵も動きを止める。
一瞬を引き伸ばし、次の一手を選び抜く。
シミュレーションゲームのような戦略性とアクションゲームがもつスリルが交差するこの感覚は、従来の2Dアクションの枠に収まらない。
そんなユニークなプレイ体験を秘めた『Million depth』を紹介。
なお、『Million depth』は無料の体験版も配信中であり、本記事ではその体験版の範囲を取り扱っている。気になったら体験版をプレイしよう。というかこれ書いてる時に大型アップデート来た!最強!!
評価ポイント
◆地下100万層を踏破する為の三要素
本作はローグライク要素を備えた2Dアクションで
「落下→戦闘or素材交渉orクラフト→落下」のサイクルを繰り返しながら地下を降りていくゲームだ。
実際にプレイしてみると、この戦闘、素材獲得、クラフトが強く連動しており、降りるごとに自分の“判断が問われる”緊張感が最後まで続く良い仕組みになっている。
【戦闘】時間を止めて未来を読む、“考えるアクション”の中毒性
主人公のモマは特殊な戦闘技術があるわけではない、いたって普通の女の子だ。移動による体当たりとドローンのようなリングに工具を取り付けてぶつけるという手段で地下生物たちと戦闘をする。
「こんな華奢な女の子が地下100万階を降りることができるのか」と不安になるが、ここでゲームの核となる技術“ビオトープジャマー”が真価を発揮する。
操作を止めると、時間も止まる。
敵の攻撃速度、範囲、距離などを見極めながら細かく静と動を切り替え、最高のタイミングで最善の一手を選び抜く。最適解を一手ずつ選んでいく感覚は、アクションゲームでありながら、シミュレーションめいた緻密さがある。
「配置が悪いからおびき寄せて攻撃しよう」、「この攻撃の軌道だったら、後退するよりもむしろダッシュで距離を詰めて一気に畳みかけよう」といった具合に、戦略を立て、細かく時間を動かしながら都度作戦を考えるこのゲーム体感は、「ポーズ画面開いて閉じてを繰り返し、苦手なアクションゲームをクリアした小学生の頃のズルいプレイ」をどこか彷彿とさせる。
このビオトープジャマーというシステムは、アクションの難しさをシミュレーションゲームの思考戦に昇華させるものであり、あの頃の、ゲームへの必死さを思い出させてくれる新しくもどこか懐かしいそんな“ゲームのあるある”を現代にリブートしたかのような仕組みだと感じた。

そしてビオトープジャマーの思考戦にアクションゲームの爽快感を追加してくれるのがコンボとかすりの要素。
リングでの攻撃が生物にヒットすると、リングは反対方向へ強くノックバックする。この跳ね返り先に別の生物がいれば、ビオトープジャマーの時間停止を維持したまま連続ヒットになる。これがコンボだ。
これにより一方的な攻撃が可能になり戦闘を優位に進めることができる。ちなみにリングでの攻撃とモマの体当たりを間髪いれずに行うことでもコンボは発生する。
体当たりで生物を移動させ、リングでそのままコンボを繋ぐという合わせ技も可能。配置を調整し一気呵成をしかける快感はまるでパズルゲームのよう。
かすりというのは文字の通り、掠るように相手の攻撃を避けることであり、生物の攻撃を紙一重で避けると「スーパージャマー」のゲージが溜まる。これが溜まりきると一定時間行動をしても時間停止が途切れない状態になり、さらにダメージによって損傷していたリングも回復する。
これはシューティングゲームにしばしばみられるリスクリターンの要素で、このかすりがアクションの緊張感を戦闘にもたらしてくれている。
もう一歩踏み込んで見てみると、普通の女の子であるモマがギリギリで攻撃を避けているように見える。物語的にも非常に説得力のあるシステムだと感心させられるいい設計だ。
操作を止めればゲームの動きが止まるという独創的なシステム上、ミリオンデプスの戦闘には、スピード感や派手さはないのかもしれない。しかし“読み”と“判断”そして生物の猛攻を避けつつ懐に飛び込む”勇気”が凝縮されている。これは他のゲームでは味わえない体感だ。
【素材交渉】ロボットの機嫌を読む、したたかな駆け引き
パーツは武器製作の部品であると同時に、通貨としても機能する。
地底にはパーツ収集家や商売ロボットがいて、彼らとは物々交換で素材のやり取りができる。ここでユニークなのは機嫌で取引成立条件が緩和すること。
彼らにとって好条件で取引をすると機嫌がよくなり交渉成立のハードルが下がる。高額なパーツや特殊能力でさえも、彼らを上機嫌にさせてしまえば破格の好条件で取引を成立させてしまうことさえできるのである。
クラフトの方向性を決める資源の配分と取捨選択の判断が同時に求められる素材交渉は、妙味に溢れたパートであり、まさにシミュレーションゲームの手触りそのものだ。

『Million depth』は、戦闘面での「予測→行動→対処」とパーツを「拾う→選ぶ→組む」という二つの螺旋が絶妙に噛み合い、それがローグライクのランダム性によって非常に手強くまたリプレイ性が高いゲームに仕上がっている。
一瞬の判断が生死を分ける緊張感と、クラフトの創意工夫、ロボットたちとの機嫌交渉、それら全てがミリオンデプスを降りていく旅としてコンパクトに統合されているのは、ワンアイデアで無限の可能性を見せてくれる、インディーゲームをプレイしている中でこそ得られる貴重な体験だと感じる。
【クラフト】地下で拾ったガラクタが攻略の最適解になる瞬間がたまらない
道中では壊れたロボットからパーツが手に入る。これを組み合わせることで、ただのハンマーだった手持ちが剣、盾、トゲなどプレイスタイルに合わせて立派な武装へと変化を遂げる。
このクラフト要素がかなり面白い。
凹凸を増やすことで攻撃力、同型の素材を特定の形で組むことで耐久力が上がる。といった具合で、組み方がそのまま戦闘の強さになってくる。
ローグライクらしく毎回手に入るパーツの種類や形が違うため、「今回の手持ちでどう戦うか」は挑戦する度に変化するのも面白い点だ。
またクラフトはプレイヤーの想像力をいかんなく発揮できる場所としても存在している。例えばマインクラフトやキングダムハーツのグミシップ、キャラメイクなどに凝り性が出てしまう自分としてはこの性能と見た目の両立を考える作業はとにかく楽しかった。
命名もできるので気に入ったクラフトができた際にはオリジナルネームを刻んでみるのも楽しみ方の一つ。

◆SFの世界観をシンプルかつインパクト抜群にまとめたストーリー
体験版の範疇でストーリーを解説させていただく。物語の重要な点は伏せているが、多少のネタバレが含まれているので注意していただきたい。
仲間を失い、宇宙船の静寂にたった一人取り残された少女・モマ。擦り切れた精神の中、舷窓に浮かぶ天体に一筋の希望を見る。
──地球。
モマは決意する。大切な友達「キミ」に会うために地球へと、「ミリオンデプス」の奥底へと墜ちていくことを。
地表から地下へと逃れた人類の足跡を辿り、道中ではアンドロイドと交流を重ねながら、モマは一歩一歩と穴の底へと進む。そしてその旅路の中でついにキミとの邂逅を果たすのだが──。
『Million Depth』の舞台は現代の延長線上にあり、太陽フレアの影響で人類の生活圏は宇宙と地下へ真っ二つに分かれた近未来のお話だ。
序盤からSFの魅力でプレイヤーの想像力を掻き立ててくる。それと同時にモマがおかれた状況が、少女一人が背負うにはあまりにも過酷だということにも心を揺さぶられる。
それでもモマは「キミ」に会いに行くという一つの希望を胸に、宇宙を離れ地下へと身を投じるのだ。
SFの世界観をミリオンデプスという一つの舞台に落とし込んだストーリーはシンプルでありながら「希望」や「意志」等力強いテーマでプレイヤーに語り掛けてくる。

体験版冒頭のアバンタイトルのインパクトは特筆すべきで、モマがミリオンデプスへ踏み出した時に表示されるタイトル演出とBGMの高まりには、思わず総毛だつほどだった。絶望の中でも少女らしい朗らかさを忘れないモマと、彼女が見せた勇気。最序盤であるにもかかわらずコントローラーを握る手に思わず力が入った。
そしてミリオンデプスで出会うロボットや人間たちにも印象深い。
パーツに執着を見せる者、今にもこと切れそうな者、神に祈りを捧げる者──、彼らはどれも個性的でモマとの会話は和やかなものも多い。
その中でも特に私の心に残ったのはロケットを作る職人ロボット。
「効率だけでは物は作れない」「物を作ることにロボットだとか人間だとか関係ない」といった、人間臭いセリフを人情味のある口調で語ってくれる。
アンドロイドやロボットが登場する本作、彼らとの付き合い方を考えさせられるさりげないやり取りは多くのプレイヤーの心に残ることだろう。
本作の体験版内で迎えるラストについても触れておこう。
モマは辿り着いた地下100万層にてキミと戦うこととなる。
しかしそれは、モマにはもちろん到底受け入れられない形で訪れる。
ここまでプレイしていた筆者は、どこか傍観者として物語を読み進めていた。
だが、この瞬間、モマの心情と筆者の心は「なぜこんなことになってしまったんだ」という絶望と疑問の上に重なりあったのだ。
そして──物語は明確な答えを示すことなく幕を閉じてしまう。
謎が謎を呼ぶストーリーテリング。この「先が気になる」味わい深い“引き”は見事と表現する他ない。
「一体どうして?」というその気持ちを抑えることが出来ず、体験版を終えたその勢いのままにストアページを開いていた。
体験版をプレイして感じたこと
地下生物を前にした時の微細な間合いの詰め方や、リングの跳ね返りを利用したコンボの組み立てが、単にゲームのテクニックではなくモマ本人の必死さや勇気に帰結する体験になっている。つまりセリフやキャラのやり取りよりも、アクションによってモマの人となりを理解できるのだと感じた。
体験版をプレイして強く感じたのは、
システム・演出・操作・ストーリー、戦闘・クラフト・交渉のどこかコミカルな雰囲気さえも、ゲームを構成する様々な要素の質感が「地下へ潜るモマの旅」という一つの方向に統合されている。
本作の体験版は、数あるエンディングのうちの一つに到達できるようになっているので、ボリュームも十分だし満足感も高い。
一つのゲームとしてしっかりと遊べる内容でありつつ、ゲーム部分の面白さと続きが気になる謎の提示が非常に巧みに行われており、自然と製品版に手が伸びる仕組みだ。
体験版クリア時、プレイヤーの前に表示されるのはいわゆるチャート選択が表示された画面
つまり体験版で飛び込んだミリオンデプスはαと呼ばれる世界線の奈落だったのだ。
では、世界線が変わればミリオンデプスはどう変わるのか。
出会ったロボット達は?モマは?そして「キミ」は?
体験版で触れたすべてが、製品版でどう変化してどういう解に至るのか。ぜひ製品版で確かめてほしい。

さいごに
『Million depth』はアクションゲームが好きなプレイヤーよりもむしろ“考えて一手を打つ”シミュレーションゲームのようなゲームを好む人にオススメできる。立ち止まり、状況を読み、最善手を選ぶ、この繰り返しが心地よいゲーム体験へと昇華されているからだ。
しかしシミュレーション然とした緻密さと手触りながらも、2Dアクション戦闘の操作感はしっかりと健在なので、風変りなアクションを楽しみたいという変わり種のアクションを求める方にも是非プレイしてほしい。
ストーリー面ではSFファンはもちろん、フラグ分岐があるADVゲームが好きなプレイヤーにも自信をもって薦められるクオリティである。
激しい言葉のやり取りよりもむしろ、静かで孤独感のある物語が好きな人にもぴったりだ。孤独と恐怖の中でも前に進もうとするモマの姿は、過度な演出に頼らずとも胸に響く強さがあるし、体験版だけでも物語として十分な満足感を得られるほど丁寧に作られている。
また、拾ったガラクタを組み合わせて武器の性能と個性を追求するクラフトの魅力も大きい。毎回異なる素材が手に入るため、挑戦するたびに「今回はどう戦うか」を想像する楽しさがある。
しかしながらこの素材は武器素材でありながらお金でもあるので、物々交換の際はいちいち分解してパーツを売って…と言う風に若干の手間が発生する。
この部分はアップデートに期待したい。
こうしたシステム・世界観・演出の“質感の統一”を楽しむタイプのプレイヤーにとって、本作は非常に満足度の高い作品になるはずだ。
一方、派手さやスピード感を求めるプレイヤーには少しもどかしく物足りない印象を受けるかもしれない。本作は直感的な操作でガンガン攻めるタイプのアクション要素はほとんど存在しない。あくまで判断と予測の積み重ねが中心にある。
また世界線の広がりや複数エンディングを前提とした構造上、何度もミリオンデプスに挑むこととなる。その点を考慮するといわゆる一本道のシナリオをテンポよく進む物語が好きな人には相性が悪いだろう。武器パーツのランダム性もゲーム性の要であり、「毎回装備が整わないと嫌」というプレイヤーにとってはストレスになるかもしれない。
ストーリーを楽しみたい人向けに、ローグライクのパーマデス(コンティニューなし)を外すことができる。ただこれは本作の面白さや魅力を削いでしまうと感じるため、初回はローグライクモードでぜひ挑戦してほしい。しかしながらコンティニューの際にしか見られない演出があり、『Millon depth』におけるコンティニューとは何かを訴えてくる設計で非常に見ごたえがある。単純に難易度軽減を行っていないその行き届いた作り込みに思わず脱帽してしまった。
地下100万層の先に、何が待っているのか。それをあなたのその目で見届けていただきたい。
