究極ウンチ地獄絵図

逃げ場なし

【ウマ娘】幾野姉ちゃん誕生日おめでとう!

『姉ウマ娘の被害者を支援する会』に赴くことになった。

雨も上がり、天気は快晴。

春の陽射しに当てられた地面からムラムラと湿気が立ち込める。

変態どもがウジのような陰茎をまろびだす予感をたっぷりと含ませた春の空気が、区民会館には満ち満ちていた。

 

自動ドアの手動で開き、『節電にご協力ください』と書かれたA4の紙に唾を吐く。

 

殺してやる。いや、誰か殺してくれ。
世界か、自分か。終わるものがどちらでも大きな違いはない。思考と感覚が喪われた世界に行きたかった。疲れていた。


色彩が抜けたような薄暗い廊下を抜けた先、目的地である扉の横に小汚いネームプレートがかけてある。


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『姉ウマ娘の被害者を支援する会 様 11:00~16:30』
震え上がった。勝ち組のクソガキが群がり4時間半慰めあっていることに絶望したのだ。切歯扼腕の想いが疲労で鈍っていた感情の蓋を割り、会議室の扉を開ける活力となった。
「──するとそこでタマ姉が『あんたのおいなりさんはパンパンやな♡』と言ってその有り余る膂力で押し倒されてしまって……」
おじさんがたくさんいる。おじさんがたくさん喋っている。

会議室内にパイプ椅子おじさんが円を描くように座っている。

 

そのうちの空いている椅子に座ると一人がこちらに向かって静かに口を開いた。
「825782」
「オグリ姉ちゃん」
間髪入れずに私が答えたこと、それが痛く気に入ったようで、そのリーダーらしき男はにかりとはにかんだ。ピアノの鍵盤のようなひどい歯並びだ。


「では続けよう。ここに集まったのは皆、同じ想いを抱えた同志だということを忘れないでくれ。では、話せる方はこの棒を手に取って」
ゆっくりと見渡すと机の端に俯く窮屈そうな少年が1人手を挙げた。
「くじけぬ精神」
男は言いながら少年に棒を向けた。少年は「えっ、えっ」と狼狽えた。
私が手を挙げる。
「Two pieces、またはあこがれの景色」
おじさんたちが頷き、男は私に棒を渡した。少年はまた俯いてしまった。


ひとつ咳払いをする。
「先達に譲るよ」
少年に目配せし、棒を渡した。彼は潤んだ瞳に力を入れ、胸の前に抱いて喋り始めた。


少年の説明は分かりにくくたどたどしかった。『友人に「ウマ娘の姉に追いつきたい」という夢をバカにされ、喧嘩をしてしまい、そのフラストレーションを姉にぶつけてしまった』、それだけの体験を話すのにたっぷり10分かかった。
「──そ、それで皆さんは、ウマ娘の姉にコンプレックスとか。むかついちゃったりしないのかなって。今日この会に参加させてもらいました」

周りのおじさんたちは沈黙している。
嫌な間が会議室に流れる。これは……漫画研究部に絵が上手い後輩が入ってきた時の「そんなガチらんでやww」という嫌な雰囲気を醸し出す先輩たちと同じだった。

 


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数秒後、男が手を挙げる。少年は慌てて棒を渡す。誰かが「ルールも守れないのかよ」と零す。

私は少年の代わりに「電撃の煌めき」と男に問いかけた。
「今宵、円舞曲にのせて」
男はしたり顔で答えながら、少年に視線を向けた。
「少年。君にはウマ弟になる適性がないよ。ウマ娘の姉に勝ちたい、姉にコンプレックスを抱くなんていうのはウマ弟しては失格だね。この会にくるべきではなかった」


少年は「ごめんなさい」と震える声で謝り、男はそれに満足したようだった。周りのおじさんも、若く無垢な少年が屈服している姿にどこか満足気な様子だった。
私はゆっくりと手を挙げる。男は棒を私に突きつけ「U情」と 変化をついた質問をしてきた。
「蹄鉄チェックのお時間です」
私は難なく答え、男は不満気だった。
「確かに少年は、この会にくるべきではなかったな」
少年はとうとう泣いてしまったようだった。数人の大人に囲まれ煙たがられたのだ。当然だろう。「うっうっ」とすすり泣く声が会議室に響く。


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「入ってくる時に聞こえたが、タマ姉だと? タマねぇねだ。親愛ランク5を読んでないのか?

それとなぜウマ娘の弟という設定でベジキャロリンの話が出てこない?
マチタンのストーリーイベントで弟がぞんざいな扱いを受けているのを知らないのか?サトノダイヤモンドに金をかけることが出来なかった君たちは知らないかもしれないが、彼女の弟も姉の後を追いかけてくるとホーム画面で言っている。

これがウマ弟なのだ。分かるか?

本当のウマ弟というのは押し倒されたり、風呂に入ったり、添い寝したりするだけの快楽押し付け痴女概念ではないんだ。

お前たちのチームランクはいくつだ?YouTubeでアホみたいな反応まとめばっか見てるんじゃないのか? チャンピオンミーティングはちゃんと勝ち残れているのか? 少年は少なくとも弟を立派に果たしている。お前たちは何をしている?」
まくしたてた後、はっと我に返り逃げるように会議室を後にする。外に出るとやけに景色が鮮やかだった。あんな腐った肥溜めみたいなところにいたから当然かもしれない。
「あのッ!」
追いかけてきた少年が後ろから声をかけてきた。
「君が来ていい場所じゃなかったな。帰りなさい。私も帰る。あぁクソ、棒持ってきちまったじゃないか」
「……おじちゃんはウマ娘の弟なの?」
「……どうだろうな。少なくとも、チャンピオンミーティングは毎回Aランクで決勝まで進んでる」
「決勝では毎度負けているがね」とハハハと笑った。
釣られて少年も笑う。初めて少年の笑顔を見た。



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幾野姉ちゃん、誕生日おめでとう。

弟ではない私より。